
白い世界で生まれたカメレオンがいました。【1】
彼はどこもかしこも真っ白な故郷が嫌いでした。
「僕はもっとたくさんの色を見て見たい」
そこでカメレオンは1人旅に出たのです。
はじめて見たのは青々とした緑色の世界。
綺麗な緑色の葉っぱに触れて、目を輝かせました。【2】
カメレオンが夢中で緑色の世界を眺めていると、
不思議なことに、葉っぱが赤色に変わっていきます。
ふと顔を上げたカメレオンは、夕日で赤色に染まる世界を見たのです。【3】
燃えるような鮮やかな赤色の世界は、
やがて滲むように、紫色から紺色、そして夜の色へと変わっていきました。
夜の空にはたくさんの星が輝きました。
赤色の星、黄色の星、どれもきらきら、瞬いています。
カメレオンは何時間も夜空を見上げていました。【4】
すると夜空は次第に灰色の雲がかかり、
ポツポツと雨が降りはじめました。
カメレオンは葉っぱの下で雨を避けながら過ごしました。
次の日の朝、カメレオンが目をさますと、雨は止み、まん丸のお日様が登っていました。
寝ぼけまなこのカメレオンが空を見上げると、
そこには大きな大きな7色の虹がかかっていました。
はじめて虹を見たカメレオンはびっくり大喜びです。【5】
赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色
カメレオンが見たかった様々な色が、そこには全部ありました。
カメレオンを虜にした7色の虹は、
ゆっくりゆっくりと、空に滲んで消えていきました。
虹のあった場所をぼんやりと眺めていると、
ふんわりした雲が漂ってきました。
青い空に浮かぶ、真っ白な雲は、
とてもとても綺麗でした。
雲の白、花の白、星の白、光の白。
同じ白でもそれぞれ違う白い色は、とても美しく輝いて見えました。【6】
カメレオンは故郷へと帰りました。
同じ白い色の世界でも、よく目を凝らせば、違った色に見えるということを、カメレオン知ったのです。

物語り 関 由美
【番号】は、作品が創られた6つの場面です。